RPA とAIは特徴などが類似していることから、しばしば混同されることがあります。しかし、RPAとAIはまったく別のものです。
RPAとは、人がルールに基づいて行なっている作業を自動化でき、業務を効率化してくれるツールのことを指しています。事務作業などの定型業務が自動化できるので、人件費の削減やコア業務に集中できるというメリットがあります。
最近では、より効率的に業務に取り組むため、RPAとAIを組み合わせて活用する企業も増えてきました。今回は、RPAとAIの違いと、RPAとAIを組み合わせて使った場合のメリットなどについても詳しく解説します。
なお、RPAについて詳しくは以下のページで紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
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AIとは?
AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能のことをいいます。人間の頭脳と同じように、学習や記憶を行なえるシステムで、膨大な情報やデータを収集・分析し、自らが考えて作業をしていくというのが特徴の一つです。
ここではもう少し詳しくAIについて解説します。
AIはデータをもとに最適解を出す
AIは、大量のデータを収集・蓄積し、分析して自ら状況に応じた判断を下します。加えて、AIは自己学習機能を持っており、繰り返し学習することで対応のパターンも増えていきます。蓄積されたデータをもとに自ら考えて判断し、最適解を導き出すことができるのが大きな特徴です。
AIにはレベルがある
AIには4つのレベルがあり、それぞれのレベルによってできることの範囲が変わります。それぞれのレベルは以下のとおりです。
- レベル1:単純制御
- レベル2:ルールやデータを蓄積し、それに基づいて判断するもの(弱いAI)
- レベル3:人が与えたデータから学習・分析し、多くの対応ができるもの
- レベル4:ルールとなるデータや対応を自ら学習・分析し、より多くの対応ができるもの
単純な制御を行なうレベル1のAIは、特定の動作のみ可能です。例えば、温度や湿度を自動で調整するエアコンや、食材に合わせた温度調整ができる冷蔵庫などが該当します。
レベル2になると、AIはあらかじめ定めたルールにしたがってデータを蓄積し、正しい判断をします。例えば、お掃除ロボットや質問に答えてくれるロボット、将棋・チェスのプログラムなどはレベル2のAIです。別名「弱いAI」とも呼ばれ、学習することはできません。あくまでも事前にプログラムされたルールのなかでのみ動作します。
レベル3のAIではデータ分析ができるようになります。レベル3の場合は機械学習を用いたものが多く、音声認識やビッグデータ分析、検索エンジンなどはこのレベルです。ただし、レベル3では自ら学習することはなく、情報は人が与える必要があります。
レベル4になると、AIは自ら学習を行ないます。巨大なデータから特徴を分析し、学習を繰り返して多くのパターンの対応が可能です。一例として、最近ニュースなどで目にする特別強い将棋のアルゴリズムや自動車運転のアルゴリズムは、レベル4のAIに分類されています。
RPAとAIの違い
AIの特徴はおわかりいただけたと思いますが、RPAとはどのように違うのでしょうか。ここでは、RPAとAIの違いを解説します。
RPAはルール通りに動きAIは頭脳になる
RPAは、事前にルールを決めて指示を出すと、そのとおりに動きます。決められた特定の動きを繰り返すので、一度決めたら必ず同じ結果が期待できるのがRPAの特徴です。そのため、指示内容が正確であれば、24時間ミスなく業務をこなせるという点がRPAの最大のメリットです。決まった手順のある事務作業や定型作業には特に適しているといえます。
一方、高レベルのAIは、人間の代わりに指示を出すことも可能で、企業の頭脳として活躍が期待できます。AIは自ら考えて行動するため、同じデータを与えても2回実行すると違う結果が出ることもあるのが特徴です。
例えば、囲碁や将棋などをRPAで行なおうとすると、決められた場所に駒を置くことはできますが、勝つための計算をして最適の場所に置くといったことはできません。一方でAIは、過去のデータなどから、勝つために最適な場所を計算することができるため、駒を置く場所を計算する頭脳として動くことができます。
RPAは安価で導入可能だが、AIはまだ高価
RPAは比較的安価であるという特徴があるため、それほど大きなコストをかけずに導入することができます。RPAツールのなかには無料で利用できる製品もあるので、ツールの導入にコストをかけたくない企業でも気軽に利用可能です。
その一方で、AIは高価な製品が多いという特徴があります。AIは自ら考え分析できる自己学習機能を持っているので、非常に便利なツールとして企業に貢献すると予想されます。しかし、AIは開発の段階で億単位のコストが必要となるケースもあるため、活用すること自体が難しいと感じる企業も多いでしょう。
RPAはプログラムスキルが不要だが、AIの運用にはある程度求められることも
RPAを導入する場合、プログラムスキルはあまり求められません。しかし、AIの場合は取り扱いに特別な能力が必要です。AIを活用するとなると、ある程度数学的な知識やプログラミング言語に関する知識を持っていなければ、扱いは難しいといえます。
例えば、RPAの場合画面を見ながら操作をすることが可能です。そのため、RPAツールによっては、数時間の簡単な教育で使いこなせるものもあります。
一方でAIの場合、AIを作成するためのプログラムにデータを与え結果を確認するということを繰り返しながらチューニングを行い、最終的にAIとして固めて運用をすることになります。AIとしてできたシステムの運用自体はシンプルになることがありますが、修正や変更などがある場合、AIを作成する過程を繰り返す必要があり、AIやプログラミング、数学、統計などの知識が求められます
RPAとAIの併用・融合
一般的に難易度が高く、高度な判断力が必要とされる業務に人間が携わる場合は、ある程度の時間や知識が必要となります。しかし、RPAとAIを併用することによって、高度な業務を行なう場合でも効率化できる可能性があるのです。例えば、定型外での作業に取り組む場合も、RPAとAIの併用によって、AIが自ら考えて判断をしてくれるので、より良い答えが得られるということもあるでしょう。
RPAとAIが融合したものはCA(Cognitive Automation)と呼ばれ、分析や改善、意思決定までも自動化してくれます。ルールに基づいた単純な作業のみを自動化するRPAと比べると、CAははるかに難易度の高い業務にも対応できるといえます。
RPAとAIは組み合わせられる
RPAとAIは組み合わせることでそれぞれの弱みをフォローし合い、より便利に活用できます。RPAとAIを併用でさらなる業務の効率化を実現し、高度な仕事でも自動化できるようになるのです。
日本は働き方改革を推進しており、短い就業時間のなかでいかに生産性を高めるかが重要なポイントとなっています。長時間労働を防ぎ、ワークライフバランスを実現するためにも、RPAとAIを組み合わせることで業務を効率化していきましょう。