広告レポートの作成業務は、労働集約業務の代表格で、残業や生産性ダウンの原因となりがちで、これを解決することが携わる企業の競争力アップには欠かせません。では、どのような考え方や手段を用いることで、これらの業務を仕組み化・自動化させることができるのかを本記事にまとめております。
広告レポートの自動化が求められる背景とは?
運用型広告市場が伸びている
インターネット広告費が6年連続で2桁の成長となり、テレビメディア広告費を超えて初めての2兆円超えとなりました。また、その内訳として、運用型広告が全体の約80%を占め前年比115.2%と成長しました。※2019年日本の広告費(出典:電通)上記の事実からもわかる通り「運用型広告」を活用する企業が増えており、その結果を確認するための広告レポートの需要が高まっていることが分かります。
運用型広告が複雑化
運用型広告の代表的な例としては、Yahoo!、Google、Facebook、Twitter、LINEなどがありますが、これら以外にも様々な特徴を持った広告商品があり20〜30種類くらいが世の中に流通しています。
さらにテクノロジーの発達と共に、広告商品の仕様も複雑化しており、例えば、どんなユーザーにリーチさせるのか?その結果としてユーザーにどのような影響が発生したのか?といったことが細かく設定したり分析できるようになっていたりします。
また、広告主は広告の費用対効果を求めるため、運用者はその結果説明用レポートと、成果の高い選択肢を検証するための分析レポートを作成することにリソースを割くシーンが多くなっています。
広告レポートは作成工数が掛かる
レポート作成は、月に1回のみ作成が求められる場合でも、対応するアカウント数が多ければ、まとまった工数が発生してしまいます。特に月初は前月分のレポートをまとめるタイミングとして作業が集中することが多く、レポート作成が現場担当者の残業原因として挙がってくることが珍しくありません。
種類が多い
とにかく色々な角度からデータを眺めることが求められるため、レポートの種類が多いことが特徴です。代表的なレポートだけでも、以下のような名称があります。
媒体別レポート/月次レポート/日別レポート/曜日別レポート/キャンペーン別レポート/キーワード別レポート/クリエイティブ別レポート/検索クエリレポート/コンバージョンレポート etc…
作業工程数が多い
レポート作成をゼロが行う場合、一般的には下記の工程を踏む必要があります。
①アカウント毎に広告管理画面にログイン
②データの切り口と指標を設定してCSVファイルをダウンロード
※レポートの種類に応じて複数回繰り返す
③ダウンロードしたCSVファイルをExcel等を使って集計加工
※レポートの種類に応じて、それぞれ作業を実施する
④数値データに対するコメントを記載する
⑤体裁を整える
シンプルに言えば、CSVファイルを広告管理画面からダウンロードしてExcelで集計するだけなのですが、この単純作業の工程をかなりの回数を繰り返すことがあります。例えば、Yahoo!、Google、Facebookの3種類の媒体アカウントを運用していて、レポートの種別を5種類作る場合、少なくとも3回のログインと15回のCSVファイルのダウンロードする作業が発生し、その集計加工作業を行う必要があります。
頻度が多い
運用型広告は水物の側面があるため、マーケットの急変によってコストや成果が急激に変動することがあります。また施策の結果をすぐに確認することが出来るため、PDCAサイクルを早く回していくことが求められる風潮があります。そのため状況を確認するためのレポートが高い頻度で求められるケースがよくあります。
レポートツールの利用メリット
レポートツールとは、広告レポートを自動的に作成することが出来るツールのことで、前段までにご紹介した工程の大半を自動化させて、工数を捻出することが利用メリットとなります。
媒体管理画面にログインする必要がない
市場で出回っている広告レポートツールですが、大きく分けてCSVアップロード型とAPI連携型がありますが、圧倒的にAPI連携型が便利です。最初に設定さえしておけば、自動的に媒体データを取り込むことが出来るため、媒体管理画面にログインしてデータをダウンロードする手間が掛かりません。
イケてるレポートフォーマットが用意されている
ツールにはレポートのバリエーションがプリセットされていることが多く、そのフォーマットは多くの会社で活用されていたり、ユーザーの要望が反映されたものとなっているため、実用性に優れたものが多いです。ツールによってはレポートをプリセットのものからカスタマイズが可能ですので、細かなニーズに合わせて利用することも可能です。
特にExcelレポートをゼロから作ったことがある方はわかると思いますが、レイアウトやデザインの調整をすることが面倒なことが多いため、プリセットのフォーマットを使うことは、そういった調整作業をしなくても済むため、レポートツールの採用理由として重要なポイントになることが多いです。
付帯機能が便利
レポートツールだけでなく、広告運用の作業が楽になる機能を取り揃えているサービスベンダーも多数あります。
注意点
ツールは便利ですが、下記の点を理解しておかないとデメリットになることもあるため注意が必要です。
API連携は完璧ではない
APIはあくまで広告媒体企業から提供されるものですので、広告媒体企業のシステム不具合などが発生した場合は、ツール側でもデータを取得することが出来ません。従って、万が一APIの不具合が発生した場合はデータが取得できないため、即座にデータが必要な場合などに手動でデータを取得する業務フローを用意しておくことが必要です。
コストが発生する
ここでご紹介しているツールは有料版であるものがメインとなりますが、価格体系は主に”アカウント数課金”か”広告利用額の従量課金”となっており、ここにツールによってはサーバー代等の追加固定費や初期費用などが掛かります。
アカウント数課金については、広告利用額が低い場合にはコストが占める割合が高くなりますし、広告利用額の従量課金については、広告利用額が大きなアカウントと連携することで、ツール利用額の絶対額が大きなりがちとなるため、導入前にはしっかりと検討することが必要です。
広告レポートのツール比較
「広告レポート ツール」や「広告レポート 比較」での検索結果に出てくる記事に高頻度で出現するツールを独自にピックアップしツールを選定しました。またWebサイトの情報を元に、一部関係者へのヒアリングも踏まえて内容をまとめております。
比較表
ATOM | アドレポ | Glu | Lisket | |
向いてる企業 | 広告会社全般 | 広告会社全般 | 大手広告会社・事業主 | 中小広告主 |
導入実績 | ★★★★ | ★★★ | ★★ | ★★★★ |
連携媒体 | ★★★ | ★★★★ | ★★★★★ | ★★ |
定型フォーマット | ★★★★ | ★★★ | ★ | ★★ |
カスタマイズ性 | ★★★ | ★★★★ | ★★★★★ | ★★ |
機能 | ★★★ | ★★★ | ★★★ | ★★★ |
※以下、ツール名称は五十音順
ATOM
広告レポートツールの市場シェアでTopレベルを誇る「ATOM」ですが、定型レポートのバリエーションが豊富な点に加えて、カスタマイズが柔軟に出来る点が評価され、広告会社から根強い人気を誇っています。
提供企業:SO Technologies株式会社
導入実績
約400社超
連携媒体
Google Analytics、Yahoo!、Google、Facebook、LINE、Twitter、indeed、Criteo、Logicad、BLADE、ScaleOut、FreakOut、Red
定型フォーマット
<レポート例>
サマリーレポート、メディア別レポート、デバイス別レポート、月別推移レポート、日別レポート、キャンペーン/広告グループ/広告レポート、キーワードレポート、検索クエリレポート、バナーレポート 等
<サンプル>
月別推移レポート
カスタマイズ性
ATOMが提供する定型レポートをカスタマイズが可能。
自社オリジナルのレポートを登録し自動化することも可能。
Excelの関数を組み替えるだけなので、簡単にレポートを登録することができます。
機能
レポート機能
数値管理機能(進捗管理、アラート)
その他
※価格帯:月額5万円〜
※2週間の無料お試し期間あり
※専用サポート窓口あり
アドレポ
広告レポートツールの市場シェアでTopレベルを誇る「アドレポ」、カスタマイズができる点、加えてAPI連携媒体の豊富さとスプレッドシートやビッグクエリ等にデータを出力できる点が魅力で高い人気を誇っています。
提供企業:株式会社イルグルム
導入実績
レポート作成実績120万件を突破
連携媒体
Google Analytics、Yahoo!、Google、Facebook、LINE、Twitter、indeed、Criteo、Logicad、BLADE、ScaleOut、FreakOut、Bypass、Nend、i-mobile、Double Click、AdMatrix、Criteo、AdEBiS、AdSent 等
定型フォーマット
10種類以上のテンプレートでカスタマイズも可能
<レポート例>
広告クリエイティブ(バナー、キーワード)レポート/入札レポート/広告グループレポート/リンク先URLレポート/キーワードレポート/サーチクエリーレポート/地域別レポート/トピックレポート/インタレストリマーケティング/年齢別レポート/性別レポート/サイトカテゴリ別レポート/サーチキーワード別レポート/キャンペーンレポート/コンバージョン紐づけレポート/広告主またぎレポート/動画指標レポートetc
<サンプル>
サマリー/メディア別レポート
カスタマイズ性
レポートのExcelフォーマットを登録し、APIから取得したデータを各項目に出力する設定が柔軟に出来るため、オリジナルのフォーマットに対応することが可能。
機能
予算消化状況のアラート機能あり
Excel・スプレッドシート・Biquery・オンラインレポート、4つの形式で出力可能
その他
※価格帯:月額7万円〜
※専用サポート窓口あり
Glu
連携できるメディアやツールの数が圧倒的に多いことから(積極的に連携するスタンス)、各社が実現したい仕組みを作り込みやすく、大手企業からの支持が多いツールです。自社独自のシステムを構築する意向がある企業に好まれやすいツールです。
提供企業:アタラ合同会社
導入実績
不明
連携媒体
Google Analytics、Adobe Analytics、Domo、domo、Yahoo!、Google、Facebook、LINE、Twitter、indeed、Criteo、Logicad、BLADE、ScaleOut、FreakOut、nend、レモーラリスティング、Bypass、Nend、i-mobile、Double Click、AdMatrix、Criteo、AdEBiS、Data Deck、adjust、theTradeDesk、ADgainer、Contents pocket、SalesForce 等
定型フォーマット
詳細不明
カスタマイズ性
独自のスクリプトを利用することでレポートの柔軟なカスタマイズが可能
機能
<基本機能>
データ自動収集、集約・集計・ドリルダウン、Excelレポート出力、CRM&日報、
<オプション機能>
自動生成(オートコンパイル)、ダッシュボード機能、メディア連携、ツール連携、BI連携
その他
※価格帯:不明
※専用サポート窓口あり
Lisket
リスティング系の便利ツールとして、老舗的なブランドである「Lisket」ですが、他ツールと比較して価格が安価な点や、付帯して利用することができる運用便利ツールが魅力のポイントです。特に中小の広告主からの高い支持を得ています。
提供会社:株式会社カルテットコミュニケーションズ
導入実績
3万ユーザー以上
連携媒体
Google Analytics、Yahoo!、Google、Facebook、LINE、Twitter、indeed 等
定型フォーマット
カスタマイズ性
上記の範囲でカスタマイズ可能。
機能
キーワード掛け合わせ、キーワード候補提案、キーワードシミュレーション、プレースメント検索、ダッシュボード、タグ監視ツール、入稿用CSV作成、入稿用CSV相互変換、顧客用ダッシュボード、メール送信オプションなど補助ツールが充実しています。
その他
※価格帯:月額1万円〜
※機能限定の無料版も提供
※専用サポート窓口あり
手動で対応する仕組みを構築してみよう
レポートツールは非常に便利ですが、運用するアカウント数や利用額が少なく、しばらくはコストを抑えておきたいという場合や、カスタマイズする条件が不確定なため様子を見ながら運用していきたい場合やAPIが提供されていない広告媒体のデータを取りまとめる場合は、スプレッドシートを活用して簡易的な仕組みを作ってみては如何でしょうか。
スプレッドシートを活用
ネット環境下でスプレッドシートを使う場合、URLさえ共有しておけば複数人での同時編集や各種データ連携がスムーズに実行することができます。またスプレッドシートベースだとレポートのデザインも簡単です。結果として、Aさんがレポートのデータを最新に更新して、Bさんはリアルタイムにそのレポートを確認することができます。また、同じくCさんがレポートに手直しを入れた場合、Aさん、Bさんはその変更を即座に確認することができます。ローカルファイルでこれらの作業を行う場合、データを更新する度にそのファイルを関係者に共有する必要があり非常に手間が掛かります。
特に広告レポートのように更新頻度が高いレポートは、スプレッドシートを活用することをお勧めします。
レポートフォーマットを作ろう
レポートの仕組み化に際して、基本的には下記の構造を意識してください。
基本的には②と③は最初にルールを決めてテンプレート化しておくことで、①にデータを都度貼り付けるだけで、面倒な集計作業を行わずに最新のレポートへ更新することが可能です。
①ロウデータシート(媒体からダウンロードしたままの形式)
②集計シート(ロウデータシートを参照)
③レポートシート(集計データがデザイン化されている目に見える部分)
※②と③は同じシートで同時に実現させても構いません。
<ダウンロード可能>
ロウデータを集計加工する際に便利な関数
ロウデータを参照させて、レポート上に集計値を計算させたりレイアウトを整えるために便利なスプレッドシートの関数をいくつかご紹介いたします。
sumifs(複数条件に一致する数値を合計する)
ロウデータから”対象月””対象キャンペーン”などの複数条件で絞った値データを取得することが出来ます。実はレポートの仕組みを構築する上でかなり重宝する関数です。
Googleヘルプ(https://support.google.com/docs/answer/3238496?hl=ja)
iferror(エラーの場合に指定した値を返す)
条件が揃わずにセルに”#N/A”などのエラーが出てしまう場合などに、” – ”やブランク等、エラーではない表記を出すことなどが可能です。
Googleヘルプ(https://support.google.com/docs/answer/3093304?hl=ja)
vlookup(指定の列と同じ行にある値を返す)
これも定番の関数ですが、様々な用途に活用することができます。importrange関数と組み合わせることで、別シートのデータから値を取得することも可能です。
Googleヘルプ(https://support.google.com/docs/answer/3093318?hl=ja)
importrange(指定したスプレッドシートからセルの範囲を読み込む)
一つにセルをメンテナンスするだけで、他シートのデータを範囲で呼び込むことが出来ます。
Googleヘルプ(https://support.google.com/docs/answer/3093340?hl=ja)
RPAの活用で一部の手作業を自動化できる
上記のように仕組み化することで、管理画面からデータを落としてきてテンプレートとなるシートにロウデータを貼り付けることでレポートを生成することが出来ます。ゼロからレポートを作り上げることに比べれば、かなりの工数削減にはなっているものの、データをダウンロードして貼り付けるような単純作業はRPAに任せてしまいましょう。
管理画面からデータのDL
<RPAによる自動化例>※動画で貼り付け
ロウデータをスプレッドシートに貼り付ける作業
<RPAによる自動化例>※動画で貼り付け
まとめ
ご紹介させて頂いた通りに、市場の拡大に伴い、広告レポートの作成に関する業務は今後も増え続けていくことが予想されます。だからこそ、広告レポートの作成のような労働集約業務については、仕組み化・自動化により、業務効率化を図っていくことが事業の競争優位性の確保に繋がることでしょう。
これを実現するための手段として、レポートツールを活用していくことがお勧めですが、それなりのコストが掛かりますので、どの課題をどのように解決したいのか整理し、手段の選定を行っていくと良いと思います。
またスプレッドシート+RPAでも、それなりの仕組みを作ることが出来ますので、事業フェーズに合わせてどのような仕組みとするか検討されるのが良いでしょう。
なお、レポート業務の仕組み化・自動化について、弊社にて無料でご相談を承ります。
必要に応じて、各種レポートツールの選定、仕組みの構築に向けたアドバイスやご紹介をさせて頂きます。
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