RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と呼ばれるロボットを活用して既存の定型業務を自動化し、業務の効率化を図る仕組みです。全国的にITの活用が広がり、働き方改革がビジネスシーンで注目されている今、RPAの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、RPAの導入効果がどれくらい期待できるのかわからないため、導入を決断できていないという企業も少なくないでしょう。
そこで今回は「RPAを使うとどれくらいのコストが削減できるのか」について、事例と併せて測定方法を詳しく解説します。
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そもそもRPAでコストが削減できるのか
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型的な業務を自動化し、業務の効率化を図る仕組みです。RPAの導入によって浮いたリソースをより重要な業務に回すことができるようになるため、組織全体の業務効率が向上します。
また、人件費を削減する効果も期待できます。RPAは複数人で行なうような作業量をRPA一つでまかなえるとされているため、導入をすることでこれまで定型業務にかかっていた作業時間を大幅に短縮できるようになるでしょう。それにともない、その定型業務に携わっていた社員の人件費も抑えられます。
RPAには導入時の初期費用や保守・運用コストはかかりますが、新規スタッフの採用と比較すると格安です。
さらに、機械が処理するため、人間のミスによって生じるヒューマンエラーがなくなり、高品質な業務を維持できるメリットもあります。人の手によって処理した業務はエラーチェックに時間がかかり、修正のためのコストも必要になりますが、RPAを導入すれば最低限のチェックのみで済みます。
RPAでコスト削減できた事例
実際にRPAを活用してコスト削減に成功した事例を2つ紹介します。
コスト削減事例 – 小売ブランド
小売ブランドの「John Lewis(ジョン・ルイス)」を運営する「John Lewis Partnership」は、これまで人の手で処理してきた繰り返しの多い業務プロセスを、RPAツールの導入により自動化しました。
同時に、RPAを活用するための研究拠点を設立し、開発者チームを配置して効率的な運用を模索し、40個もの業務プロセスの自動処理に成功しています。
自動化を達成した分野は一つにとどまらず、財務・人事・サプライチェーンなど多岐にわたり、組織全体で60台ものソフトウェアロボットを稼働させています。
RPAの導入によって日本円で約6億6,000万円ものコスト削減を達成し、空いたリソースはより価値が高い業務に割り振れるようになりました。
引用元:アイティメディア株式会社
コスト削減事例 – 富士通
富士通マーケティングは、全社的にRPAを導入することで、コスト削減を実現した企業です。当初、同社は「RPAが必要だ」と判断した部門に限って導入する予定でしたが、次の2つの懸念材料を考慮し、全社的に導入を進めることを決定したそうです。
- 各部門によってRPAの運用方法が異なる「ブラックボックス化」の懸念があること
- 内部統制が行き届かないことにより「野良ロボット」が発生するリスクがあること
その後、同社はRPAを活用したいと希望する各部門の意見をヒアリングし、適切かつ効率的な運用を実現するための「導入ガイドライン」を制定しました。
RPAの導入や運用を進めるうえで、内部統制を統括する「内部統制室」が重要な役割を担っています。RPAを、J-SOX法(内部統制報告制度)や財務処理などに関連する業務に適用する場合、業務プロセスの変更が内部統制リスクにつながる恐れがあります。
そのため、「当該業務に対してRPAを適用する際には、あらかじめ内部統制室に相談する」というルールを決めておき、一貫した内部統制が保たれるように工夫しています。
引用元:富士通Japan株式会社
RPAでのコスト削減効果を測定する方法
ここからは、RPAを導入したことで、どの程度コストを削減できたのかを測定する方法を紹介します。測定方法には「定性的な測定」と「定量的な測定」の2種類があり、双方の側面から効果を測定することが大切です。
定量的な効果測定
定量的な効果とは、具体的な数値で表せられるものをいいます。
RPA導入によって効果を測定するものとして、次のようなものが挙げられます。
- 金銭的な負担をともなうコストの削減
- 社内工数削減によるコストの削減
- 深夜作業や休日出勤による、時間外労働の割り増し分の削減
- 人員増加に伴う採用コストの削減
- 新人の教育コストの削減
金銭的な負担をともなうコストに関しては、RPAの導入費や維持費が挙げられます。高価なシステムを導入したり、派遣社員を雇用するより低い金額で運用が可能なので金銭的な負担を削減できます。
また、RPAを導入することで作業時間はもちろん、確認時間などに要していた社内工数も削減可能ですので、結果としてコスト削減につながります。
なお、これらの数値測定は数値化しやすいため、RPA導入前の数値をあらかじめ算出しておき、RPA導入後の値と比較することで容易に効果を可視化できます。なお、RPA導入前後を比較する具体的な計算式は下記になります。
【RPA導入前のコスト発生状況】
1時間1,000円で利用できるシステムを利用し、そのツールを使い2時間の作業を行なうと想定します。その場合、月換算すると1ヶ月で4万円のコストが発生します。
1,000円/1時間(システム利用料)×2時間(作業時間)×20日(日数)=4万円
【RPA導入後の効果】
RPAの導入によって、この作業時間を1時間に短縮できた場合の計算式は、次のとおりです。
以下のとおり、コストを50%削減できたことがわかります。
1,000円/1時間(システム利用料)×1時間(作業時間)×20日(日数)=2万円
【すべての作業をRPAで自動化した際の人件費】
全営業日に行なっている2時間の作業をRPAですべて自動化した場合の計算式は、次のとおりです。
2,000円/1時間(メンバーの時給)×2時間×20日=8万円
このように、RPA導入前の数値(コスト)をあらかじめ算出し、RPA導入後の数値と比較して削減効果を測定します。
定性的な効果測定
定性的な効果とは、数値に表すことが難しいものをいいます。RPA導入による具体的な効果としては、次のようなものが挙げられます。
- 社内メンバーの“負担感”(精神的コスト)の軽減
- 優秀な社員のリソース確保
- 売上アップに繋がる業務時間の創出
RPAを導入すると、優秀な社員に単純作業を担当させる必要がなくなり、より生産性の高い業務や人手不足のチームに割り当てることが可能になります。定型業務は重要ではありますが、生産性は非定型業務のほうが高いことが多いため、業務を自動化して他の業務にリソースを移行させる取り組みは有効といえるでしょう。
また、決まった時間に決まった業務を行なわなければならない場合は、その業務が原因で希望日に休暇を取れないなどの状況に陥る可能性もあるでしょう。RPAなら休日や時間帯に関わらず業務をこなしてくれるため、社員の負担を大きく軽減できます。
定性的な効果測定の場合も、RPA導入前後でその効果を比較します。定性的な効果は、社員に向けたアンケート調査で測定するのが一般的です。「RPAの導入後に“負担感”が減少したかどうか」などの質問などで、期待した効果が現れているかどうかを確かめましょう。
RPAでコスト削減は可能!しかしそれ以外の価値もたくさん!
RPA導入のメリットの一つにコスト削減が挙げられますが、それ以外にも品質の維持や業務効率化など、さまざまなメリットが期待できます。入念に準備したうえでRPAを導入すれば、これまでネックになっていた数多くの業務をスムーズに処理できるようになるかもしれません。
導入の際は他社の事例なども参考にしながら、自社にとってRPAをどのように役立てられそうなのか、十分にリサーチしましょう。導入時は費用対効果の試算だけでなく、運用体制も慎重に検討することが大切です。